博士の愛した数式

小川洋子さんの「博士の愛した数式」を読んだ。
たいへん評判になった本だが今まで読んだことがなかった。
記憶が80分しか持たない博士は、人とふつうに関係を持つことができない。
友達になっても80分後には忘れてしまうからだ。
しかし、家政婦の私とその子供「ルート」は博士と友達になった。
数学博士である博士は数式の美しさを人に伝える天才であった。
数式を通して人と人とがつながるなんて考えたこともなかった。
この本を読んで二人の恩師のそれぞれのことばを思い出した。
一人は高校生のころ英語を習っていた先生だ。体をこわして定職についていなかった父親ぐらいの年齢の人で、芸術にも文学にも造詣が深く、英語というよりも文化というものを教えていただいていた。「数学ほどロマンチックで美しいものはない」と言った。数学嫌いだった私は、その言葉を聞いても「??」だった。この本を読んでその言葉の意味がはじめてわかった気がする。
また、大学のときの恩師は「自分は遊びは嫌いだ。(たぶんこの遊びはこどもの遊びではなく、マージャンとかカラオケとかパチンコとかを指していたのだと思う)実質的に役に立つから。」と言った。
数式の美しさは実際の役には立たない。どんなに見事に問題をといてもそれだけのことだ。でも人はそれを求めずにはいられない。そしてその喜びを共有することで人と人はつながれる。それは案外忘れてはならない基本的なことかもしれない。
子供はこうした喜びを求めているのだろう。実際に役に立つことばかりに目がくらみやすいのはきっと大人の方なのだろう。
by nabana05 | 2005-10-09 06:27 |

東京の片隅で昔ながらの緑を再現することを目指しています。活動の紹介や、地域の自然との出会いを書いています。


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