俳句の入り口
2005年 08月 29日
読んでいる途中で藤田氏が亡くなられた。
この本を読むまで、名前に聞き覚えがあるという程度の認識であったのが、悔やまれる。
ぜひ、テレビなどで凛とした言葉を聞いてみたかった。
俳句をはじめて3年~10年ぐらいの人を対象とした、ということで、藤田氏の考えるよい俳句とはどのようなものかが、名作の味わいとともに胸に響く。
俳句は韻文であり、リズムこそ命である。しかし、最近は意味優先の理屈ばかりの句ばかり、ということを憂いていて、その危機感が切迫したものに感じられた。
冒頭の章にある段落が印象的である。
「(俳句らしい俳句とは)散文の切れっ端の五・七・五ではなく、堂々たる韻文の作ですよ、と言いたいのです。この十句、じっくり読んでください。ただ読むだけでなく、声を出して朗誦してみてください。韻文のこころよいリズムが胸中を駆け巡るはずです。そして、俳句作品そのものが眼前に立ってくるはずです。快適な立ち姿です。立ち姿の美しい俳句を作りたいものです。」
俳句を読むと目の前に情景が浮かび、その情景に自分がひたっていることがある。
まさに「立ち姿」である。
「切れ」「点と線」など「立ち姿」を持つ句のためのポイントが実感をともなってわかる。
この「ああそうか」という実感は豊富な名句の例と添削例による。平凡な言葉のつながりが添削によって芳香を発することばとなる。うーん、とうなってしまう。添削の理由が明確なのも勉強になる。
一例だけあげると…
「草萌えの気配濃くなる雨二日」
→「草萌えを促す雨や庭の石」