俳句の入り口

 藤田湘子氏の「俳句の入り口」(NHK出版)を読んだ。
 読んでいる途中で藤田氏が亡くなられた。
 この本を読むまで、名前に聞き覚えがあるという程度の認識であったのが、悔やまれる。
ぜひ、テレビなどで凛とした言葉を聞いてみたかった。
 俳句をはじめて3年~10年ぐらいの人を対象とした、ということで、藤田氏の考えるよい俳句とはどのようなものかが、名作の味わいとともに胸に響く。
 俳句は韻文であり、リズムこそ命である。しかし、最近は意味優先の理屈ばかりの句ばかり、ということを憂いていて、その危機感が切迫したものに感じられた。
 冒頭の章にある段落が印象的である。
「(俳句らしい俳句とは)散文の切れっ端の五・七・五ではなく、堂々たる韻文の作ですよ、と言いたいのです。この十句、じっくり読んでください。ただ読むだけでなく、声を出して朗誦してみてください。韻文のこころよいリズムが胸中を駆け巡るはずです。そして、俳句作品そのものが眼前に立ってくるはずです。快適な立ち姿です。立ち姿の美しい俳句を作りたいものです。」
 俳句を読むと目の前に情景が浮かび、その情景に自分がひたっていることがある。
 まさに「立ち姿」である。

 「切れ」「点と線」など「立ち姿」を持つ句のためのポイントが実感をともなってわかる。
 この「ああそうか」という実感は豊富な名句の例と添削例による。平凡な言葉のつながりが添削によって芳香を発することばとなる。うーん、とうなってしまう。添削の理由が明確なのも勉強になる。

一例だけあげると…
 「草萌えの気配濃くなる雨二日」
→「草萌えを促す雨や庭の石」
by nabana05 | 2005-08-29 16:04 |

東京の片隅で昔ながらの緑を再現することを目指しています。活動の紹介や、地域の自然との出会いを書いています。


by nabana05
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